さらに2ヶ月余りが過ぎ、震災後の東京は年をまたいだ。
 新年を祝うような世情では無論なかったが、避難所の整備やインフラの復旧がかなり進んだため、冬の寒さで大勢の凍死者が出るような心配は無くなった。
 秀夫のハーレムでも、日常生活の利便はずっと改善されていた。
 風呂場やトイレを心おきなく使えるようになったので、日々セックスに明け暮れていても、不潔さが蓄積されることはない。
 電話回線も復旧し、秀夫はそれで株取引を行って、終日を在宅で過ごせるようになった。
 いきおい、奴隷たちの様子にも目が行き届くし、彼女らが逃げだそうとするようなスキを見せなくて済む。
 日用品や食材の買い出しはなるべく少ない回数で済ませ、そのために外出する間は、女たちそれぞれを別室に監禁し、拘束し、猿轡をかませてと、用心に用心を重ねていた。
 ここまで築き上げた理想の王国を、秀夫はもう決して失いたくなかったのである。


 するうちに、3人の囚人の精神(こころ)や身体にも、大きな変化が起こり始めた。
 その変化が特に際立っていたのは、美しい人妻、高川みゆきである。


 この牢獄へ拉致されてきてからずっと、彼女は3人の中でも、秀夫から最も激しく身体を求められてきた。
  人妻のみゆきは、まだ未熟とはいえ、男の肉体を迎え入れる術(すべ)を知っていたし、元々の素質なのか、その感度も人並み以上に鋭敏だった。だからこそ、ヴァギナとアナルを同時に責められるという拷問じみた行為を、監禁初日から連日続けられても、それに耐え抜くことが出来たのである。
 処女だった紀子とみわは、あまり激しく苛むことは出来ないし、鉢を割られたばかりの女体は、まだまだ官能を汲み上げる能力が育っていない。
 秀夫にしても、犯す相手が大きな反応を見せるほど興が乗るのは当然で、その結果みゆきが、彼の欲望を一際多く受け止めさせられることになったのだった。


 最初の1ヶ月あまり、みゆきは、自分ばかりが繰り返し凌辱の標的となることに、怯え、絶望しながら、心の半分では、仕方の無いことだとあきらめてもいた。
 腕力ではかなうわけがないのだから、どう逆らってみても無意味だし、自分が男の相手をすることで、他の若い2人を多少なりとも庇ってやれるという、義侠心めいた思いもあったのだ。
 だが、彼女がいかに貞淑で初心(うぶ)だったとしても、寝ても覚めても獣のような交合を強いられ続ける生活が、その精神と身体を蝕まないはずがない。
 みゆきは日一日と秀夫への嫌悪感が薄れてゆき、次第に彼との行為に溺れるようになっていった。
 その最大の原因は、やはり秀夫の与えてくれる官能美が圧倒的だったことだろう。
 それまで想像したことも無い、目のくらむようなオルガを幾度となく味合わされ、みゆきはその快感の強烈さに酔いしれた。
 夫以外に経験が無かったのだから仕方ないが、過去1年間の夫婦生活で、みゆきは女としての悦びを一通りは分かったつもりになっていた。
 だがそれはせいぜいとば口に過ぎず、夫はむしろ性的に淡泊な男だったことを、皮肉なことに、秀夫との交わりが教えてくれたのだ。

 
 夫と秀夫とは何もかもが違う。
 男性自身のたくましさや持続力はもちろん、体位のバリエーション、テクニック、時には淫具やゼリー剤を用いて行為のメリハリに気を配るなど、女を悦ばせる手管をあれこれと身に付けている。
 それは秀夫が商売女ばかりを相手にしてきたからでもあったのだが、単純な後背位すら知らずに過ごしてきたみゆきにとって、セックスとは何と奥深いのかと驚嘆させられることばかりだったのだ。


 ことに監禁初日にアナルを奪われたこと、そしてそこがたちまち淫らな器官に変質してしまったことは、あまりに大きなショックだった。
 最初こそ激痛に身をよじったが、日々同じ部分を柔らかくほぐされ、刺激され、拡張されていくうちに、無理なく男の体を受け入れ、純粋に快感だけを感じ取れるように開発されてしまったのである。
 ヴァギナとは違う、しかしそれ以上とも思える官能を、人の直腸がなぜ発生するのか、みゆきはワケが分からないままエクスタシーに翻弄され、達すると同時に目を裏返して失神したことさえあった。


 やがてみゆきは、男に抗い続けることをあきらめた。
 日々凌辱されながらもアクメに打ち震え、喜悦の叫び声を上げてしまう我が身の、アンビバレントな状況に耐えきれなくなったからである。
 女というのは、皆容易くセックスによって支配されてしまうものなのか、あるいは自分だけがとりわけ淫らに生まれついているのか、みゆきには判断が付かなかったが、秀夫の性調教に完全な敗北を喫したことは認めざるを得なかった。そうでなければ、自らの良心と貞操観念が瓦解したことを合理化出来ず、頭がおかしくなってしまいそうだったのだ。


 不思議なもので、屈服することを一旦認めてしまうと、行為の快感はさらに増大するように思われた。
 感じてはいけない、ヨガってはいけないと、必死に自分を押し殺すことをやめ、自然体で官能を味わえるようになったからかもしれない。
 みゆきはまるでタガが外れたように積極的になり、その豊かな裸身をのたうち、汗と涎にまみれて、秀夫との情事に応えるようになっていった。
 あれだけ貞淑だった美貌の人妻は、ついに身も心も性の奴隷と化して、完全に男の手中へと堕ちたのである。


 上条紀子は、そんなみゆきの急速な変貌ぶりを、ただただ薄気味悪い思いで傍観していた。
 3ヶ月前には自慰すら知らなかった紀子にも、連日の調教によって、さすがに絶頂を迎えるだけの性感は開発されている。
 しかしそれは、あくまで男に強いられてのことであり、自ら求めて達するようなものでは決してない。
 まして愛する夫がいるのにそれを裏切り、秀夫との交合を楽しむ素振りさえ見せ始めたみゆきの体たらくは、畜生同然の浅ましい姿として目に映るのだった。
 (なんてイヤらしい!・・・こんな悪魔のような男に飼い慣らされてしまうなんて!・・・・・)
 純血を失って間もない潔癖症から、紀子はみゆきに激しい嫌悪と軽蔑の念を覚えたが、それは彼女が抱いている、強い恐怖心の裏返しでもあった。
 それはもちろん、「自分もいつかはこうなってしまうのでは?」という恐ろしさだ。
 紀子にとって、始めてここで会った頃のみゆきは、決して身持ちの悪い女には見えなかった。むしろ人妻としては、人並み以上に初心(うぶ)で羞恥心の強い女性と思えたのだ。
 そんな人が、たったの3ヶ月でここまで淫らに造り変えられてしまうのだから、同じ事が、この先我が身にも起こるのかもしれない。
 まだまだ性の知識に欠ける紀子は、男のセックスが女体に与える影響を予想できず、それが大きな不安を呼び起こしているのだった。


 (絶望してはダメ! いつかはここから逃げ出せると信じて、自分を失わないようにしないと・・・・・)
 みゆきの哀れな姿を反面教師とするような心境で、ともすれば折れそうになる心にムチを打ち、紀子は日々自身を励まし続けた。しかし彼女の頑なな反骨心は、やがて敢えなくも、木っ端微塵に打ち砕かれることになるのである。
 それは3人目の虜囚である少女、三枝みわに降りかかった、残酷に過ぎる運命が原因であった・・・・


←2
二次創作集TOP
4→